今日の講義は
農業経営と企業経営、地域活性化に向けた新事業創出、食に関する経営情報戦略、6次産業化と知的財産管理について
名古屋大学名誉教授 竹内裕之先生の講義です。
前回は地域資源利用論などについての講義をしていただきました。
1 農業経営と企業経営 元気の出る道
我が国の農業生産と所得についての統計を見ると、農業生産額は1984年とピークに15年で40%減少し、生産農業所得では1994年をピークに右肩下がりの減少を続けている。
農産物価格指数では、1993年をピークにして減少し、他方農業資材価格指数は上昇を続け、2007年で農業物価指数を追い越している。
政府の農業予算は1995年を100とした指数では農業関係予算は減少を続け、一般会計の総額との差は拡大するばかりである。
EUとの比較で見ると
EU全体の共通農業予算額は横ばいであり、内容については1992年から農地に対する直接補助金政策が取られ、2007年からは環境負荷の少ない農業への補助金にドラスティックに転換されている。例えは”1haで飼う家畜が2頭までなら補助金を出す”とか”農地の境の樹木を残した農地に助成する”など地域バランスや環境負荷を考慮した農業政策が取られている。
このように日本政府は農業に対し”北風政策”ともいえる過酷な政策を取り続けている。
TPP交渉では、現佐産地規則(地域ブランドの保護)、使用農薬に対する考え方の違いから検疫などの非関税障壁の撤廃を米国は求めている。知的財産権の保護もこれの長期化を目指す米国とEUや日本の利害が対立している。
本質論を報道する記事は少ないが厳しい環境が緩和される情勢下にはない。
安部政権下でのTPP交渉は日本の安全保障には役立つだろうが貿易面では得をすることはないだろうといわれている。
日本の農業は構造転換期にあり会社法人や農業法人の占める比率が高まり、雇用就農者の割合も確実に伸びてきている。
この方向性は今後定着化し、景気低迷、巨大な財政赤字、不安定雇用の三重苦にあえぐ日本では農業の大規模化のほかに、地域を生かす産業として就農、雇用拡大、環境ビジネス参入などが重要視されてくるであろう。
今後の農業は、市場をしっかりと検討し、自分たちの住む地域を見つめ、何をどこで作りどこで売るかという事業計画をしっかり立てて消費者に生産過程を透明化した形で、食の見える化、農との協働にむけ推進してゆかねばならないと考える。
2 地域活性化に向けた新事業の創出
農業から「農」的産業へ~食材調達の変化と国内農業者の減少に対応するため、農業の専門化、複合化、生産・加工・販売+サービスなど垂直複合化により農業の6次産業化を推進する。
このために国は6次産業化法や農商工連携促進法を制定し、助成金や補助金制度を作った。
この制度に関心の高い農業者の収益は確実に上昇しているとともに、情勢の管理職や役員が主婦の視点で経営に参加すると確実に収益性が向上している例が多い。
行政では企画段階からコーディネイター無料で派遣し指導にあたっている。
3 食に関する経営情報戦略
消費者がどのようなプロセスを経て農産物を購入しているか良く分析し、情報収集にはIT技術を駆使し、効率の良いサプライチエーンを構築し販売促進を図る。
4 6次産業化と知的財産
知的財産権には、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、育成者権がある。特に物品の形状・色彩・模様などを独占できる権利で、包装用袋なども対象になる。
その他、商標権は名前、ロゴ、商品サービスの出所で”あまおう甘王・富士宮やきそば”などがある。特に農業が国際展開する場合に重要でこの分野で立ち遅れている知的財産権の保護はこんごますますその重要度を増してくる。
文責与太郎
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